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2016年 12月 01日
「オオカミのボロネーゼ」 bookumakk 綺麗づきで、器用で、運動の苦手な、細身のオオカミがいました。 群れの中で足の速いのや、狩りが上手なのとか、 一番長く遠吠えのできるオオカミたちからは、 気弱なやつだと言われています。 でも彼は、自分が気弱だとか、他が特別だなんて思い込まず、 みんながみんな得意なことがあるのだと、自分自身に言い聞かせていました。 ポジティブな彼は全然気弱なんかじゃありません。 それに、彼にはそれを忘れる程の楽しみがあったので、 ちっとも悩むようなことはしませんでした。 彼の楽しみは、町の端にある子宝さんのお家から聞こえるお話を聞くことです。 子宝さんの子供達はお話が好きで、いつも寝る前にはお話を聞きたがりました。 夜になるとあまり自信のない遠吠えをして、子供達がなかなか寝付かないようにしました。 なぜなら、話が長く聞けるからです。 子宝さんの寝室の窓に近寄ると、尖った耳を澄ませました。 今日はオオカミがうさぎにボロネーゼを作ってあげる話です。 「...けれども、うさぎはお肉が食べれません。 なので、オオカミはお肉の代わりに歯ごたえの良い木の実を入れてあげました。 お肉が入っていないことに気がついたウサギは、 美味しい美味しいといいながら木の実のボロネーゼを食べました。」 すると兄弟の一人が 「僕はやっぱりお肉が入っているのがいいな〜」 「僕も!!」「私も!!」と皆が口を揃えていいました。 「お母さんもそうよ〜」 お話を聴き終えたオオカミは料理をしてみたくなりました。 次の日、オオカミは子宝さんから聞いた話を思い返しながら、 材料を集めることにしました。 カラスに形のいびつなフライパンと底が真っ黒になった鍋をゴミ捨て場から持ってきてもらい。 ニンニク、人参、玉ねぎをモグラからもらい。 余ったワイン、トマト缶は酒場の猫からもらいました。 料理には火が必要ですよね。 器用な彼は、町の外にある灯火に蔓を巻きつけた棒を当て、火を分けてもらいました。 夕暮れになった頃、 石を積み上げて作ったキッチンに、 森で集めてきた枯れ木と落ち葉を入れ、 フライパンと鍋を温め始めました。 森の中で火を起こしたら火事になるなんて心配しませんでした? 彼はもちろん火消しのためのバケツを用意しています。 賢いでしょう? ここだけの話、フライパンをくれたカラスが火事の話を教えてくれていたのです。 フライパンには油が必要です。 彼はもちろんそのために植物から油をとってきています。 賢いでしょう?でもでも、ここだけの話、酒場の猫が主人の料理する様子を教えてくれたのです。 聞いた話を思い出しながら彼は酒場で有名なボロネーゼを作り始めました。 作り方によるけど、ボロネーゼにほんのちょびっとお砂糖が必要なこと知ってました? お砂糖は手に入らないので花の蜜を少しだけ入れます。 誰から教えてもらったの?って気になるでしょう? お花の蜜といったら蜂さんです。もちろんこれもここだけのお話。 ではでは、早速作り始めます。 すると火を灯したからか、群れの狼たちが集まってきました。 「なんだい、料理でも始めたのかい、人間の奥さんみたいだね」 意地悪な誰かがそう言うと皆はクスクスと笑い出しました。 しかし、そんなのはもう慣れっこです。 彼は不慣れな手つきで黙々と料理をしました。 でも、大事なこと忘れていませんか?ボロネーゼってパスタが必要ですよね ? 一体どうするのでしょう? 実はお話するのを忘れていました。 だってお話が長くなったら皆が寝ちゃうかもしれないから。 彼の住む森の近くには水車小屋があって、 そこに粉挽きのおじいさんと息子さんが住んでいて、 粉を加工して町に売りに行っています。 でも、その息子さんはちょっとおっちょこちょいで、 水車小屋から町に行く間に売り物をぽろっと落としてしまったのです。 そこでたまたま、オオカミはパスタを拾ったのです。 粉挽きの息子さんのためにも、ここだけの話にしてあげてくださいね? バレたらおじいさんに怒られてしまいますから。 パスタを茹でて、木の実とトマト、人参、 そして玉葱を炒めてソースを作り、 木の器に盛ったパスタにかけて完成です。 すると、周りでよだれをすする音が聞こえてきました。先ほどまで彼を茶化していた狼たちです。 もちろん、彼達には食べさせません。 だって、意地悪を言われたのですから。 彼は完成したボロネーゼを持ってある場所に向かいました。子宝さんのお家です。 いつもお話を聞かせてもらっているお礼をするためでした。 でも、彼は狼ですから子宝さんに直接渡すわけにはいきません。 彼は子宝さんのお家の入り口の前に干してあった布を、ボロネーゼの上に被せドアの前に置き、 そして、大きく深呼吸をしてからドアをノックして、 一目散に木の影に隠れました。 すると留守番していた子供達がゆっくりとドアを開け、 ボロネーゼの匂いに気がつきました。 8人兄妹はお留守番をしていました 。 それに夕方なのでお腹が空いて空いて困っていたのです。 そんな時に目の前に美味しそうなボロネーゼがあったら食べたくなってしまいますよね。 8人兄妹はお母さんにバレなければ大丈夫といった風に考えて、 皆で約束しました。ボロネーゼを食べたことはここだけの話だよってね 。 しばらくして子宝さんが帰ってきました。 「今日はボロネーゼよ」 なんて言ったって子供達はボロネーゼが大好きなのです。 ですから、お母さんは子供達が喜ぶものだと思ってましたが、 子供達の様子がいつもと違うので変な気がしました。 すると末っ子の女の子が、さっきボロネーゼ食べたよ。と言ってしまったのです。 あっ!という顔をする子供達もお母さんの顔を見て首をすくめてしまいました。 どうやって用意したの?誰かが作ったの?材料はどうしたの? 心配で心配で仕方ない子宝さんは子供達を問い詰めました。 観念した子供達は玄関の前にボロネーゼがあったことを素直に話しました。 子宝さんも初めは信じられなかったのですが子供達が嘘をついていないことがわかると、 先ほどとは違った風に怒り出しました。 その時、オオカミはどうしていたって? 彼も怒られている子供達のようになっていましたよ。 だって、子宝さんがこんなに怒ったのを聞いたのは初めてなんですから。 「誰が作ったかわからないものは食べちゃいけないわ、悪いものが入っていたらどうするの! お母さんが帰ってきて皆が何処か遠くに行ってしまったら、 お母さんは泣いて泣いて何も食べれなくなって寝込んでしまうわ。だからもうそんなことはしないで!」 嘘をつくとお母さんが悲しむことに気がついた子供達は、 わんわん泣きだしてしまいました。その時、オオカミはどうしていたって? 彼も涙をいっぱい流していました。 声をだしたら遠吠えになってしまうのではと心配になり、がんばって声を出すのを我慢してました。 子供達がわかってくれたことを知ると、 子宝さんは子供達に言いました。 「いっぱい泣いたからお腹空いたんじゃない?お母さんの美味しいボロネーゼは食べないかしら?」 お母さんがもう怒っていないことがを知った子供たちはテーブルについて、いっぱいいっぱい食べました。 そして、夜になると子供達はいつものようにお話を聞きたがるのでした。 その日からもう、オオカミは子宝さんの家の近くでお話を聞くことはありませんでした。 彼は子宝さんのお家から帰るとき、家族のことを考えました。 群れをなしているオオカミたちからすれば、 意地悪を言う奴もいるけれど、彼らはみんな家族だったのです。 子供達にとってお母さんの料理が一番なら、 自分の作ったボロネーゼが狼たちにとって一番になればなと思いました。 彼は余った材料でもう一度ボロネーゼを作って仲間の狼たちに食べさせてあげました。 するとバカにしていたオオカミたちも彼の料理を美味しく食べ、 彼のことを料理の上手なオオカミだと言いました。 それからしばらくして、森の中にオオカミのレストランができたことは、 それはまた別のお話。 ************************************
by bookumakk
| 2016-12-01 23:00
| 創作
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